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名古屋地方裁判所 昭和58年(わ)1612号 判決

裁判所書記官

服部義広

本店の所在地

名古屋市中川区下之一色町字権野八六番地

法人の名称

株式会社日成工業所

代表者の住居

愛知県海部郡蟹江町錦二丁目三八番地

代表者の氏名

兵頭正敏

本籍・住居

愛知県海部郡蟹江町錦二丁目三八番地

会社役員

兵頭正敏

昭和二二年八月二六日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官門西栄一出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社日成工業所を罰金八〇〇万円に、被告人兵頭正敏を懲役六月に各処する。

被告人兵頭正敏に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社日成工業所(以下単に被告会社という)は、名古屋市中川区下之一色町字権野八六番地に本店を置き、各種型銅・銅矢板の加工及び修理、建築工事・土木工事等の事業を営むもの、被告人兵頭正敏は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人兵頭正敏は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注費及び人件費を計上するなどの方法により所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二、七八三万四、八四八円で、これに対する法人税額が九九六万三、五〇〇円であるのに、同五五年一〇月二七日、同市同区尾頭橋一丁目七番一九号所在の中川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五四八万二、六五〇円で、これに対する法人税額が一二二万二、八〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度における正規の法人税額との差額八七四万七〇〇円を免れ

第二  昭和五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が三、六五六万二、七七一円で、これに対する法人税額が一、三八四万八、〇〇〇円であるのに、同五六年一〇月二七日、前記中川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、〇一一万六、九五八円で、これに対する法人税額が二七六万一、三〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度における正規の法人税額との差額一、一〇八万六、七〇〇円を免れ

第三  昭和五六年九月一日から同五七年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が四、九八六万二、三八七円で、これに対する法人税額が一、九二四万二〇〇円であるのに、同五七年一〇月三〇日、前記中川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、五六九万二、〇九五円で、これに対する法人税額が四九〇万二、八〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度における正規の法人税額との差額一、四三三万七、四〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により法人税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人兼被告会社代表者兵頭正敏(以下証拠の表示においては単に被告人兵頭正敏という。)の当公判廷における供述

一  被告人兵頭正敏の検察官に対する供述調書二通

一  被告人兵頭正敏の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  被告人兵頭正敏作成の上申書

一  佐藤竹利及び宮本千恵子の検察官に対する各供述調書

一  松岡司、佐藤武久及び井上夾の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  佐藤竹利(五通)、橋本ヤス子、松岡平治、中嶋勝美、岩本金太郎、佐藤武久、高田宏、竹本良之、福井進吾、兵頭タダヲ、井上郁政(二通)及び山田慶子作成の各上申書

一  大蔵事務官作成の調査報告書

一  大蔵事務官作成の証明書三通(検察官請求証拠等関係カード甲の8ないし10)

一  大蔵事務官作成の査察調査書一七通(同甲の11ないし27)

一  登記官作成の商業登記簿の謄本

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書二通(同甲の2及び5)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同甲の53)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書二通(同甲の3及び6)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同甲の54)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書二通(同甲の4及び7)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(同甲の55)

(法令の適用)

被告会社の判示第一の所為は、昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条、一六四条一項に、判示第二及び第三の各所為は、右改正後の同法一五九条、一六四条一項に、被告人兵頭正敏の判示第一の所為は、行為時においては右改正前の同法一五九条に、裁判時においては右改正後の同法一五九条に、判示第二及び第三の各所為は、右改正後の同法一五九条にそれぞれ該当するところ、被告人兵頭正敏の判示第一の罪については、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、同被告人につき各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は被告人両名につきいずれも同法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金八〇〇万円に処し、被告人兵頭正敏については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処し情状により同法二五条一項を適用して同被告人に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文によりその二分の一ずつを各被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 横山義夫)

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